2015年1月31日土曜日

ビンテージ機器の修理

☆SONYTCD-D3用充電池、充電器の修理(11000円)
充電用のDC電源は7Vジャンク品。赤字9Vと書いてあるケースは中身は抵抗とLEDのみ。木製のケース内にはニッケル水素電池が5本。充電時間は12~15時間。本体接続時の稼働時間は60~90分。充電時、放電時に発熱は殆んどありません。

ソニー社DAT、TCD―D3は製造終了後25年以上たっているため、既に保証期間が過ぎ、付属のニッカド電池が使用不可能になっていました。また、充電器にも不具合があり、使用できない状態でした。電池の方は、ニッケル水素電池5本で、木枠の箱に入れて製作しました。充電器の方は、プラスチックのケースのみを使用し、安全のためにゆっくりと充電するタイプを製作しました。充電時間は12~16時間かかりますが、充電後の使用時間は60分以上の使用が可能で、再生のみでは90分以上稼働しました。修理に当たっては安全のため、温度ヒューズと0.5Aのヒューズを併用し、また充電電圧が、ニッカド電池1本当たり1.45Vを超えないよう設定しました。その結果、今回は修理と言うより、新たな製作のようなものになりました。依頼者様には、修理品と取扱説明書を手渡し、ビンテージ機器としての取扱上の注意事項と共に、安全面のお願いを申しあげました。

 
☆MICRO SX-111FX(制御基板修理、モーター軸のぶれ修理35000円)
木枠を取り付け、作業しやすくしました。モータ部ーは分解して錆や汚れを落とします。基盤部の電解コンデンサーは全て交換、回転テストは、別途ゴムベルトを製作して行いました。
 
モーターの振動音が大きいと言うことで修理の依頼がありました。1m以上離れてもシュルシュルという音が聞こえます。まずは、モーターの制御基板のコンデンサー、抵抗、トランジスタ類をチェック。電解コンデンサー3個(内1つは容量0)が劣化していましたが、その他は異常ありませんでした。電解コンデンサーは交換が必要と判断、整流回路基板も含めて全部交換しました。肝心のモーターの軸のぶれは、軸受及びスピンドルに傷がついているので、修理が難しく、下部軸受を強化プラスチックで補強して軸をほんの僅か上にあげて、スピンドルの傷と軸受の傷が当たらないようにしました。気になったのは、下部軸受のスピンドル当たりの部分がほとんど摩耗していなかったことです。よって故障の原因が長期使用による摩耗ではなく、ベルトの張力による無理な力が加わったためと判断しました。使用者様には硬質のベルトをゴム製の軟らかい物に変更することをお勧めしました。

ALTEC342B2台(バイアス、ヒーター回路修理、調整2台で24000円)
業務用モノラルパワーアンプ(ミキシング)7027プッシュプル35Wです。雑音が多いと言うことで修理依頼がありました。先ずはセレン整流器が、バイアス用と全段のヒーターDC点火用の2つあり劣化していましたのでシリコンダイオードを並列に付けて補助しました。セレン整流器は劣化し易いので仕方ありません。また、1000μF15Vのコンデンサーが劣化で容量不足のため補強しました。調整箇所はバイアス調整のみですが、40Vに設定し、AB級動作になるようにしました。尚、出力管はペアチューブが必須で、球のバラツキによるアンバランス電流はハムノイズの原因となります。NFB約10dB。トータルのゲインが高いのは、製造当時の音源の信号レベルが低いためで、今日のCDプレイヤーからの信号で、入力ボリュームは上げられません。本機は、117V60Hz仕様ですので、100V50Hzでは最大出力が低下するのは当然です。本機では計算値に近い25W(定格の70%)の出力が出ました。
古いアンプなので、セレンの整流器が使われています。さすがは業務用、故障個所は少ないです。
☆古典アンプの再現245プッシュプルトランス結合アンプ2台(配線・調整2台で68500円)
古色蒼然、戦前の電蓄の再現。出力トランスUTC、LS55、ドライバートランスUTC、A19、チョークUSA軍用、部品類USA多数。不動品ジャンクを再配線しましたので、見かけは古いですが新作です。配線は、ハーネス(のように)して引き回した旧態依然としたやり方です。機器としての佇まいが大変素晴らしく、品格が窺えます。4W程度の出力ですが最新の録音にも対応できます。SN比も良好で、雑音は、皆無です。再生音は上質で、聞き手を魅了する何とも言えない雰囲気があり、真空管アンプの最終到達点の1つです。まさに、極上の音質、1度は手にしたいアンプです。
ナス型245(45)プッシュプルモノラル2台。アウトプットUTC LS55,LS52、ドライバーUTC A19、チョークUSA軍用、前段カップリングSANGAMO、ブロックケミコンSPRAGUE。配線は電蓄時代を再現しました。
☆300Bシングルの至宝SV―300BE、音質改善(改造費用15000円、2台実施)
ボリュームが上げられず、使いづらいし、きめ細やかさが不十分ということで依頼を受けました。先ずは、ゲインの調整と音質改善のため、オーバーオールのNFBを12dBかけました。あわせてカップリングコンデンサーを小容量(0.05μF)に変更して、低域の安定化を図りました。高域も、20kHz以上を減衰させ、自然な音質を追求しました。300Bシングルは無帰還が定番ですが、御本家のWE91Bは大量のNFBのかかったアンプです。NFBのかかった300Bシングルアンプは、格別の味わいがあります。結果、大幅な音質改善となり、お客様も十分に満足されました。
配線は雑然としていますが、しっかりとハンダ付けされています。尚、NFBをかけるために、出力トランスの2次側の極性を逆にしました。
☆マイケルソン&オースチンTVA-1の例
故障内容は、KT88がスパークしてヒューズが切れてしまうというもの。
○電源トランスの入力は120Vに設定。
TVA-1の電源トランスは入力に120と100Vの端子がありますが、B電源が定格を超えないように、120Vに接続しました。それでもKT88のプレートには480Vの電圧が出ます。TVA-1の電源トランスは、出力電圧が高めに設定してあり、入力を120VにしてもKT88のヒーターには5.8V出ました。
○KT88のカソード抵抗、スクリーングリッド抵抗の交換。
カソード抵抗、グリッド抵抗には、大電流が流れた形跡があり、抵抗値が10%以上大きくなっていました。特にカソード電流測定用の抵抗が駄目になっていて、中には数倍の値になっているのもありました。このカソード抵抗は電流値確認用と同時に保護抵抗にもなっているので、大電流が流れた時には焼損して、KT88やトランスを守ります。よってあまり大容量の抵抗は不適切です。ちなみに、カソード抵抗の47Ωは、KT88に80mA流れるとして、消費電力は47Ω×(0.08)=0.3Wです。

不良の抵抗を交換
交換したセメント抵抗類
○バイアス調整について
バイアスは、出力管1本当りに流れる電流が同じになるよう調整します。KT88には37mAくらい流すと音質が良いようで、最大出力が増加し、低音の量感も増します。ペア取りしたKT88なら、電流値37mA(47Ωの両端1.74V)に調整すると、バイアス電圧はマイナス50~60Vに治まります。4箇所のバイアス調整は、球のバランスをとるため、何度も繰り返して微調整しました。この時、バイアスのマイナス電圧は4か所とも異なります。測定では、入力0.9Vで最大出力が70W歪5%でした。TVA-1はKT88の定格近くで動作させていると聞きますが、固定バイアスでは、電流を多く流すとA級動作に近くなり、かえって最大出力は減少し、音質も平坦で面白味がなくなるようです。また、真空管の寿命にも影響することも覚悟しなければなりません。ちなみにTVA-1カタログデータの出力70Wは、KT-88のアイドリング電流40mA弱で十分に達成できました。

大きく重いアンプで一人では運べません
☆マッキントッシュMC30の例(2台で47920円)
2台並べて作業すると故障も見つけやすいし、特性の測定も比較しやすい。トランス類は傷防止のためにビニールで覆ってから作業する。

アメリカ製(クラロスタットと思われる)の貴重なボリュームは交換しようにも入手できないので、分解してアルコールで綺麗に清掃しました。また、発見しにくかったが、よくよく見ると入力端子のハンダが剥がれていた。

この部品は使用できない位に劣化していたので、交換。12AX7は貴重な球が使われていましたが、2本は劣化し、使用不可能。
カーボン抵抗は劣化しやすいが、特に電流の多く流れるところでは劣化が激しい。位相反転を正しく行うために、カソード結合回路のプレート抵抗を交換。この部分も見落としがちと思われる。
直結回路初段のカソードバイパスコンデンサーの容量抜けあり。電圧がほとんどかからない部分では、かえって電解コンデンサーが劣化する。この部分も発見しにくい。

①電源トランスの入力を117Vに変更
②入力ボリュームのガリ雑音除去→取り外して分解し、アルコールで清掃。
③出力不良、歪及び雑音の改善→位相反転回路のプレート抵抗劣化交換。初段のカソードのパスコン劣化交換。化。NFB回路の抵抗のハンダ不良改善等
④入力端子の接触不良改善
⑤真空管ソケットのゆるみ矯正
⑥入力部のハンダ付けの劣化改善
⑦真空管の動作確認→直結段及びカソードフォロワー12AX7の劣化
⑧最終確認→マニュアルの特性データと同等を確認。最大出力は26W。

☆RCAMI9335ペアの例
6L6プッシュプルのトーキーアンプです。1台は音が出ず、もう1台は雑音が多いと言う状況でした。真空管ソケットの接触不良改善、電解コンデンサーの容量(20μ程度はあるので不良ではない)追加、及び残留雑音除去等行いました。
ボリュームはガリ雑音が盛大に出ていました。分解してアルコール洗浄し、ガリはほとんどなくなりました、。オリジナル尊重の意味で、部品交換はできるだけ行わないようにしています。目盛板とツマミ(チキンヘッド型)は新品ですが、当時のムードを醸し出しているのがお分かりいただけると思います。
電解コンデンサーの容量不足(20μ程度はあるので不良ではない)があり、残留雑音がやや多めでしたので追加しました。本機のようにB電源にチョークコイルを使わずコンデンサーのみの場合は、容量の大小が雑音に直接影響します。必要且最小限であることは言うまでもありませんが、外観にも気を使い、今回は、絶縁体を剥がし、紙を巻いててニスを塗りました。
出力端子は空いていた穴を利用して取り付けました。シャーシに穴をあけたりして改造することは、できる限り行わないようにしなければなりません。あらかじめ空いている穴をどう活用するかが大切です。
☆ALTEC1568Bペアの例
6CA7ppアンプ、片方の音が出ない状態,。もう片方はパイロットランプ切れ。出力管のバイアスがー27Vに設定されており、そのため、第2グリッドの保護抵抗が焼き切れていました。マニュアルにある―37Vに調整。この機器は117V仕様ですが100Vでも問題なく動作し、出力も25W以上ありました。パイロットランプは豆電球のようなねじ込み型ではなく、ツイスト型(スワン球)6.3Vです。
外観は良くないですが、音質・性能はさすがアルテックです。
交換した部品
パイロットランプは6.3Vで、羽無のスワン球です。溶けた抵抗が痛々しいですね。