2013年11月21日木曜日

6V6プッシュプルアンプ2台



6V6はアマチュアの我々にとっては、大変使いやすい球です。プッシュプルアンプではビーム管接続なら出力10Wがとれます。電源も、プレートに300V,電流80mA前後ですので、比較的小容量のトランスで済みます。また、バイアスが浅いので、電圧増幅段が1段で、負帰還をかけるための増幅度も十分なマージンが取れますので、特性の良いアンプができます(表1)。
Frank's electron Tube Data sheetsより転載

今更、」6V6は米国製ラジオや電蓄に多用され・・・・・・・・云々・・・・・・・。このような古い話をするのは、甚だ恐縮ですが、オールドマニアのたわごとをお許しください。
 戦後のわが国では、ラジオや電蓄の球と言えば6ZP1、42が主流でした。ですから、ラジオと言えば42の音だった当時、6V6を使った米国製ラジオの素晴らしさは国産を圧倒していて、何とか憧れの6V6を手に入れて音を聞いてみたいと思っていました。戦勝国アメリカと敗戦国日本の経済力工業力違いがお分かり頂けると思います。豊かになった今日では考えられないでしょうが、6V6は高級ラジオ、アンプの代表でした。
V6は6L6とともに発表されたメタル管が起源で、その後多種多様に発展しました。プレート損失の大きい6L6は主に業務用の大出力アンプに使われたのに対して、電力消費量の少ない6V6は、モニターアンプや、家庭用として普及していきました。UZ-42をUSPソケットにしたものが6F6ですが、その座を6V6に奪われてしまった形になったため、製造量は6V6の方が多かったようです。
 このような経緯から、6V6は軍用を含め、数多くのメーカーで製造されていましたので、現在でも入手が楽な球の一つです。個人的な好みかもしれませんが、初期のメタル管の黒く底光りのする姿などは、見るからに良い音がしそうに思えます。加えて、6V6は現在でもギターアンプ用に製造されている現役の真空管であり、そういう意味でもオーディオアンプとして、手元に1台は置いておきたいと言う思いに駆られます。
このように6V6は大変優等生的な性格の球ですが、強いて欠点を上げるとすればバラつきが多いことでしょう。プッシュプルアンプの場合、特性の揃ったペアチューブが必要ですが、かつてのように真空管が豊富にあった時代であれば容易に選別できましたが、とうの昔に製造が中止されている欧米や日本のメーカーの球では、なかなか電流値の揃った球がセレクトできません。ですから、製造年代の古い6V6を入手し実用機に用いる場合には、シングルが良いと思います。プッシュプルの場合にはセルフバイアスとし、バイアス抵抗を2つの球それぞれに設けたA級動作で、電流値のバラつきに対応すべきと考えます。
位相反転には抵抗分割型を採用しました。PK分割やカソード結合に比べて、歪や再生帯域、出力などの点で不利です。しかしながら、6V6が電蓄に多用されていた当時はこのような抵抗分割型の位相反転が主流でした。結果的には我田引水になりますが、良い音とは何かを考えさせられました。電蓄時代からのマニアの方の中には、カソードから音が出るのはどうにも受け入れ難いという方もいらっしゃると思いますが、今回の製作では大いに共感した次第です。
 出力段はウルトラリニア接続としましたが、これは使用した出力トランスにULタップがあり、遊ばせておくのが勿体無いと思ったからです。ビーム管接続であれば、出力の増大も見込まれたはずですが、前に3極管接続で製作した経緯があり、その結果が良かったので、3極管接続と5極管(ビーム管)の中間のウルトラリニア接続としました。これは、現代的な特性の優れた再生システムに適したアンプを考えたためです。
 次に6V6プッシュプルステレオアンプを2例紹介いたします。写真のようにA4サイズの小型版でありなから、音楽再生にお標準機として十分な性能を持った優れものです。さしずめライト級チャンピオンと言った風情です。製作者としても手放すのが惜しい、お気に入りのアンプとなりました。
6V6(3極管接続)プッシュプルアンプ
6V6GTRussia旧タイプ、5964東芝通則用。トランス:アウトAndix6608、電源POWER6314。シャーシ:天板アルミアクリルラッカー塗装、木枠ラワン無垢ウレタン塗装。仕様:出力5W+5W、残留ノイズ1.0mV、周波数特性20Hz~20kHz±0.5dB以内、消費電力約70W。サイズ:DWH206×303×118㎜、重さ5.4kg。
6V6(ウルトラリニア接続)プッシュプルアンプ
6V6GTオランダ、6414USA、5AR4RUSSIA。トランス:出力TOEI、電源TOEI。シャーシ:天板アルミゴールドアルマイト、木枠ラワン無垢ウレタン塗装。仕様:出力7W+7W(歪5%)、
残留ノイズ0.7mV、周波数特性40Hz~20kHz±1dB以内、消費電力約80W。サイズ:DWH200×300×130㎜、重さ6.8kg。

出力は4,6,8,16Ωに対応
ベテラン技術者による丁寧な配線です。