2014年3月16日日曜日

私的プリアンプ論その2

【プリアンプの形態】
プリアンプの形態は、フロントパネル付の箱型シャーシが多いですが、パワーアンプのように真空管が露出しているのもまた味があります。遊び心は、真空管アンプの楽しみの一つ。真空管を魅せるために、シールドケースを省くと、トランスやオイルコンデンサーとの対比によって、真空管がより引き立ちます。

ECC83EQ-ECC82プリアンプ
【主な使用部品】○真空管:ECC82JJ社、ECC83SOVTEC社、6X4TEN社。○コンデンサー:出力部アメリカPYRAMID社、カップリングコンデンサー日通工社、トランスNOGUCHI、SEL社他。【諸特性】○フラットアンプ部:再生帯域20~20kHz±1.5dB以内、歪率0.5%以内(1kHz、出力0.5V)、ゲイン2.2倍(6.8dB)、最大出力8V以上、残留雑音0.1mV以下。○イコライザーアンプ部:再生帯域20~20kHz、RIAA特性誤差±1.5dB以内、歪率0.3%以内(1kHz、出力0.5V)、ゲイン92倍(39dB)、許容入力100mV以上、残集雑音0.6mV、【仕様】○サイズ:幅330×高さ135×奥行220㎜(突起物含まず)、重さ5.0㎏、消費電力約30W。

ゴールドの塗装がたいへん美しいアンプです。プリアンプでは、トランスと真空管を離すことがノイズ対策の基本。トランス類は定格に余裕のある方が、誘導ハム対策の上で有利です。


内部配線にシールド線は使っていません。内部配線を長いシールド線で引き回すと高域が減衰することがあります。音質の上でもシールド線を使わない方が有利です。


 【プリアンプの必要性
これまで多くのプリアンプ、パワーアンプを手がけてまいりましたが、レコードが音楽ソースの中心だった時代には、良いプリアンプ作った方がシステム全体としての音質向上が図れていたようです。レコード再生にはRIAA特性を持ったイコライザーアンプが必要不可欠ですが、特性に多少誤差があっても、実用上問題はなく、それほど気にせずに使用していました。また、レコードの録音状態に差があり、低域の豊かな録音だったり、高域が不足気味の録音もあったりで、それらを評価することも密かな楽しみでした。

私と友人E氏の会話(昭和50年頃)

E:SR(雑誌名)読んだか?プリアンプの製作記事が載ってたぞ。
私:SR買ったよ。ここにあるよ。(2人で雑誌に見入る。)
E:6球式のステレオプリアンプは、SRPPを使ってCRイコライザーにしている。他の雑誌にもSRPPのイコライザーアンプの記事が出ていたな。
私:この6球式のステレオプリアンプを参考にして作ろうと思っているとこだよ。
E:そうか。楽しみだな。でもな、CRイコライザーは、音は良いかもしれないけれど、ノイズを無くすことは絶対に無理だぞ。もし、CR型のイコライザーにCR型のトーンコントロールのプリアンプを考えているなら、悪いことは言わないからやめとけよ。
私:前にNFB型のイコライザーアンプを12AX7でやってみたけど、どうも気に入らない。ノイズも少ないし、特性もいいんだけど、何か物足りない。
E:マランツ型やマッキン型を参考にしたらどうなの。ほとんどノイズは出ないし、音もいいよ。
私:カソードフォロアーがついていることも、気になるんだ。

 このころ私は、マルチアンプシステムに凝っていて、チャンネルディバイダーやパワーアンプのドライブ段など、カソフォロを挿入していました。そして、性能を高めるはずの抵インピーダンス回路が音質の向上に繋がっていないことに気付き始めたようでした。

E:トーンコントロールはどうする気なの?
私:トーンコントロール回路は、今回は付けないつもり。もし付けたとしてもパスできるように、スイッチを入れておく。
E:名案だな。スピーカーが優秀ならトーンコントロールはほとんど使わないと思う。また、3ウエイのマルチアンプなら、低域、高域のコントロールはチャンネルディバイダーの操作でできるから必要ないよ。

滑稽な話でが、コスト面でマルチアンプシステムにするという事情がありました。マルチアンプシステムの方がコスト的に有利だったのです。ネットワーク方式の場合、大型の空芯コイルやオイルコンデンサーが音質を左右することになり、高価になります。また、高能率のコンプレッションドライバーやホーンツィータでは、ウーファとの能率を合わせるためには、これまた高価なアッテネータが必要になります。
マルチアンプシステムならば、低域よりもウーファよりミッドレンジやトゥイータの方が能率が低くても問題はなく、ユニットの選択肢が広いです。ちなみに音の良いミッドレンジは、10~20センチのフルレンジで、能率はウーファより劣りますが、コスト的にはコンプレッションドライバーよりも安価になります。
また、最大のメリットは製作後遊休のアンプ類を使うことができることで、低域にはプッシュプル、中高域にはシングルアンプを使うのが定石でした。、

今考えると笑い話にしかならない様な理由で、大真面目にマルチアンプシステムにしていました。音質上、最も影響の大きなミッドレンジには、アシダボックスやコーラルのフルレンジを使っていました。