2018年10月14日日曜日

製品紹介 古典球アンプ 音響迷路型スピーカー


RCA社、ナス型の245です。発表会で紹介させて頂きました。ビンテージパーツをふんだんに使い、古き良き時代を再現しました。A7を繋いでの音質は、オールラウンドで、特に古い音源の再生は、魅力的でした。

UY-27ブルーバルブ、245、280、UTCトランス、軍用部品多数使用
発表の様子。魅惑の真空管クラブ宇都宮、発表会、宇都宮東図書館にて、2018、7、15

2016年12月1日木曜日


【魅惑の真空管クラブ発表会にて】
宇都宮で行われた、真空管アンプの試聴会に出品しました。2A3ppアンプとビクターのプリアンプの改造品ですが、広い会場での再生にも十分な実力でした。大勢の方に自分のアンプを聴いて頂き批評して貰えることは、自分自身の勉強になり、有り難いことです。
会場はかなり広く、天井が高いので大きな音が出せます。出品したのはは2A3pp、ビクターP-2020改造品。12GーB7ppも参考までに出品。試聴された方にも好評でした。

2015年1月31日土曜日

ビンテージ機器の修理

☆SONYTCD-D3用充電池、充電器の修理(11000円)
充電用のDC電源は7Vジャンク品。赤字9Vと書いてあるケースは中身は抵抗とLEDのみ。木製のケース内にはニッケル水素電池が5本。充電時間は12~15時間。本体接続時の稼働時間は60~90分。充電時、放電時に発熱は殆んどありません。

ソニー社DAT、TCD―D3は製造終了後25年以上たっているため、既に保証期間が過ぎ、付属のニッカド電池が使用不可能になっていました。また、充電器にも不具合があり、使用できない状態でした。電池の方は、ニッケル水素電池5本で、木枠の箱に入れて製作しました。充電器の方は、プラスチックのケースのみを使用し、安全のためにゆっくりと充電するタイプを製作しました。充電時間は12~16時間かかりますが、充電後の使用時間は60分以上の使用が可能で、再生のみでは90分以上稼働しました。修理に当たっては安全のため、温度ヒューズと0.5Aのヒューズを併用し、また充電電圧が、ニッカド電池1本当たり1.45Vを超えないよう設定しました。その結果、今回は修理と言うより、新たな製作のようなものになりました。依頼者様には、修理品と取扱説明書を手渡し、ビンテージ機器としての取扱上の注意事項と共に、安全面のお願いを申しあげました。

 
☆MICRO SX-111FX(制御基板修理、モーター軸のぶれ修理35000円)
木枠を取り付け、作業しやすくしました。モータ部ーは分解して錆や汚れを落とします。基盤部の電解コンデンサーは全て交換、回転テストは、別途ゴムベルトを製作して行いました。
 
モーターの振動音が大きいと言うことで修理の依頼がありました。1m以上離れてもシュルシュルという音が聞こえます。まずは、モーターの制御基板のコンデンサー、抵抗、トランジスタ類をチェック。電解コンデンサー3個(内1つは容量0)が劣化していましたが、その他は異常ありませんでした。電解コンデンサーは交換が必要と判断、整流回路基板も含めて全部交換しました。肝心のモーターの軸のぶれは、軸受及びスピンドルに傷がついているので、修理が難しく、下部軸受を強化プラスチックで補強して軸をほんの僅か上にあげて、スピンドルの傷と軸受の傷が当たらないようにしました。気になったのは、下部軸受のスピンドル当たりの部分がほとんど摩耗していなかったことです。よって故障の原因が長期使用による摩耗ではなく、ベルトの張力による無理な力が加わったためと判断しました。使用者様には硬質のベルトをゴム製の軟らかい物に変更することをお勧めしました。

ALTEC342B2台(バイアス、ヒーター回路修理、調整2台で24000円)
業務用モノラルパワーアンプ(ミキシング)7027プッシュプル35Wです。雑音が多いと言うことで修理依頼がありました。先ずはセレン整流器が、バイアス用と全段のヒーターDC点火用の2つあり劣化していましたのでシリコンダイオードを並列に付けて補助しました。セレン整流器は劣化し易いので仕方ありません。また、1000μF15Vのコンデンサーが劣化で容量不足のため補強しました。調整箇所はバイアス調整のみですが、40Vに設定し、AB級動作になるようにしました。尚、出力管はペアチューブが必須で、球のバラツキによるアンバランス電流はハムノイズの原因となります。NFB約10dB。トータルのゲインが高いのは、製造当時の音源の信号レベルが低いためで、今日のCDプレイヤーからの信号で、入力ボリュームは上げられません。本機は、117V60Hz仕様ですので、100V50Hzでは最大出力が低下するのは当然です。本機では計算値に近い25W(定格の70%)の出力が出ました。
古いアンプなので、セレンの整流器が使われています。さすがは業務用、故障個所は少ないです。
☆古典アンプの再現245プッシュプルトランス結合アンプ2台(配線・調整2台で68500円)
古色蒼然、戦前の電蓄の再現。出力トランスUTC、LS55、ドライバートランスUTC、A19、チョークUSA軍用、部品類USA多数。不動品ジャンクを再配線しましたので、見かけは古いですが新作です。配線は、ハーネス(のように)して引き回した旧態依然としたやり方です。機器としての佇まいが大変素晴らしく、品格が窺えます。4W程度の出力ですが最新の録音にも対応できます。SN比も良好で、雑音は、皆無です。再生音は上質で、聞き手を魅了する何とも言えない雰囲気があり、真空管アンプの最終到達点の1つです。まさに、極上の音質、1度は手にしたいアンプです。
ナス型245(45)プッシュプルモノラル2台。アウトプットUTC LS55,LS52、ドライバーUTC A19、チョークUSA軍用、前段カップリングSANGAMO、ブロックケミコンSPRAGUE。配線は電蓄時代を再現しました。
☆300Bシングルの至宝SV―300BE、音質改善(改造費用15000円、2台実施)
ボリュームが上げられず、使いづらいし、きめ細やかさが不十分ということで依頼を受けました。先ずは、ゲインの調整と音質改善のため、オーバーオールのNFBを12dBかけました。あわせてカップリングコンデンサーを小容量(0.05μF)に変更して、低域の安定化を図りました。高域も、20kHz以上を減衰させ、自然な音質を追求しました。300Bシングルは無帰還が定番ですが、御本家のWE91Bは大量のNFBのかかったアンプです。NFBのかかった300Bシングルアンプは、格別の味わいがあります。結果、大幅な音質改善となり、お客様も十分に満足されました。
配線は雑然としていますが、しっかりとハンダ付けされています。尚、NFBをかけるために、出力トランスの2次側の極性を逆にしました。
☆マイケルソン&オースチンTVA-1の例
故障内容は、KT88がスパークしてヒューズが切れてしまうというもの。
○電源トランスの入力は120Vに設定。
TVA-1の電源トランスは入力に120と100Vの端子がありますが、B電源が定格を超えないように、120Vに接続しました。それでもKT88のプレートには480Vの電圧が出ます。TVA-1の電源トランスは、出力電圧が高めに設定してあり、入力を120VにしてもKT88のヒーターには5.8V出ました。
○KT88のカソード抵抗、スクリーングリッド抵抗の交換。
カソード抵抗、グリッド抵抗には、大電流が流れた形跡があり、抵抗値が10%以上大きくなっていました。特にカソード電流測定用の抵抗が駄目になっていて、中には数倍の値になっているのもありました。このカソード抵抗は電流値確認用と同時に保護抵抗にもなっているので、大電流が流れた時には焼損して、KT88やトランスを守ります。よってあまり大容量の抵抗は不適切です。ちなみに、カソード抵抗の47Ωは、KT88に80mA流れるとして、消費電力は47Ω×(0.08)=0.3Wです。

不良の抵抗を交換
交換したセメント抵抗類
○バイアス調整について
バイアスは、出力管1本当りに流れる電流が同じになるよう調整します。KT88には37mAくらい流すと音質が良いようで、最大出力が増加し、低音の量感も増します。ペア取りしたKT88なら、電流値37mA(47Ωの両端1.74V)に調整すると、バイアス電圧はマイナス50~60Vに治まります。4箇所のバイアス調整は、球のバランスをとるため、何度も繰り返して微調整しました。この時、バイアスのマイナス電圧は4か所とも異なります。測定では、入力0.9Vで最大出力が70W歪5%でした。TVA-1はKT88の定格近くで動作させていると聞きますが、固定バイアスでは、電流を多く流すとA級動作に近くなり、かえって最大出力は減少し、音質も平坦で面白味がなくなるようです。また、真空管の寿命にも影響することも覚悟しなければなりません。ちなみにTVA-1カタログデータの出力70Wは、KT-88のアイドリング電流40mA弱で十分に達成できました。

大きく重いアンプで一人では運べません
☆マッキントッシュMC30の例(2台で47920円)
2台並べて作業すると故障も見つけやすいし、特性の測定も比較しやすい。トランス類は傷防止のためにビニールで覆ってから作業する。

アメリカ製(クラロスタットと思われる)の貴重なボリュームは交換しようにも入手できないので、分解してアルコールで綺麗に清掃しました。また、発見しにくかったが、よくよく見ると入力端子のハンダが剥がれていた。

この部品は使用できない位に劣化していたので、交換。12AX7は貴重な球が使われていましたが、2本は劣化し、使用不可能。
カーボン抵抗は劣化しやすいが、特に電流の多く流れるところでは劣化が激しい。位相反転を正しく行うために、カソード結合回路のプレート抵抗を交換。この部分も見落としがちと思われる。
直結回路初段のカソードバイパスコンデンサーの容量抜けあり。電圧がほとんどかからない部分では、かえって電解コンデンサーが劣化する。この部分も発見しにくい。

①電源トランスの入力を117Vに変更
②入力ボリュームのガリ雑音除去→取り外して分解し、アルコールで清掃。
③出力不良、歪及び雑音の改善→位相反転回路のプレート抵抗劣化交換。初段のカソードのパスコン劣化交換。化。NFB回路の抵抗のハンダ不良改善等
④入力端子の接触不良改善
⑤真空管ソケットのゆるみ矯正
⑥入力部のハンダ付けの劣化改善
⑦真空管の動作確認→直結段及びカソードフォロワー12AX7の劣化
⑧最終確認→マニュアルの特性データと同等を確認。最大出力は26W。

☆RCAMI9335ペアの例
6L6プッシュプルのトーキーアンプです。1台は音が出ず、もう1台は雑音が多いと言う状況でした。真空管ソケットの接触不良改善、電解コンデンサーの容量(20μ程度はあるので不良ではない)追加、及び残留雑音除去等行いました。
ボリュームはガリ雑音が盛大に出ていました。分解してアルコール洗浄し、ガリはほとんどなくなりました、。オリジナル尊重の意味で、部品交換はできるだけ行わないようにしています。目盛板とツマミ(チキンヘッド型)は新品ですが、当時のムードを醸し出しているのがお分かりいただけると思います。
電解コンデンサーの容量不足(20μ程度はあるので不良ではない)があり、残留雑音がやや多めでしたので追加しました。本機のようにB電源にチョークコイルを使わずコンデンサーのみの場合は、容量の大小が雑音に直接影響します。必要且最小限であることは言うまでもありませんが、外観にも気を使い、今回は、絶縁体を剥がし、紙を巻いててニスを塗りました。
出力端子は空いていた穴を利用して取り付けました。シャーシに穴をあけたりして改造することは、できる限り行わないようにしなければなりません。あらかじめ空いている穴をどう活用するかが大切です。
☆ALTEC1568Bペアの例
6CA7ppアンプ、片方の音が出ない状態,。もう片方はパイロットランプ切れ。出力管のバイアスがー27Vに設定されており、そのため、第2グリッドの保護抵抗が焼き切れていました。マニュアルにある―37Vに調整。この機器は117V仕様ですが100Vでも問題なく動作し、出力も25W以上ありました。パイロットランプは豆電球のようなねじ込み型ではなく、ツイスト型(スワン球)6.3Vです。
外観は良くないですが、音質・性能はさすがアルテックです。
交換した部品
パイロットランプは6.3Vで、羽無のスワン球です。溶けた抵抗が痛々しいですね。
 

2014年9月1日月曜日

フロントパネルの一例

プリアンプの場合、フロントパネルは顔とでも言うべきものです。ここでご紹介するのは、シルクスクリーン印刷によるものです。



HIMAC コントロールアンプ CA1001(¥445000)


スクリーン印刷の例(アルミアルマイトヘアーライン仕上げ、穴の位置を印刷し、加工を容易にしています。

デザインは自由です。アドビーイラストレーターやAUTOCADもOKです。
世界に一つだけのアンプに挑戦してみませんか。



2014年6月28日土曜日

私的プリアンプ論その4

【シンプルプリアンプ】
シンプルな高音質、高性能のプリアンプは、今日の真空管アンプの重要な位置を占めていると思います。シンプルなプリアンプにおいて、最も留意すべきは低ノイズであることです。音質追求のためには無帰還アンプが良いのですが、ノイズ対策に苦労することは明白です。その点本器は、部品配置、配線を工夫することで、低ノイズを実現しています。歪率については、あまり良い値ではありませんが、低歪率のアンプが必ずしも優れた音質とは限らないことも事実と思います。

12AU7フラットアンプー12AX7イコライザーアンプ
【諸特性】○フラットアンプ部:再生帯域20~30kHz±0dB、歪率0.4%(1kHz、出力1V)、ゲイン3.51倍(10.9dB)、最大出力12V、残留雑音0.07mV。○イコライザーアンプ部:再生帯域20~20kHz、RIAA特性誤差±1.5dB以内、歪率0.4%以内(1kHz、出力0.4V)、ゲイン95倍(39.5dB)、許容入力60mV以上、残集雑音0.4mV。【仕様】○サイズ:幅320×高さ80×奥行250㎜(突起物含まず)、重さ4.5㎏、消費電力約30W。○入力系統(100kΩ):PHONO、CD、TUNER、AUX、TAPE、○出力系統:プリアウト2(負荷50kΩ以上、REC1(負荷100kΩ以上)。シャーシ:リード、ライトグリーン色塗装、フロントパネル:アルミ白色粘着シート貼アクリルラッカー塗装。

 
ECC82フラットアンプ・ECC83イコライザーアンプ 

【諸特性】○フラットアンプ部:再生帯域20~30kHz±0dB、歪率0.4%(1kHz、出力1V)、ゲイン3倍(9.5dB)、最大出力12V以上、残留雑音0.07mV。○イコライザーアンプ部:再生帯域20~20kHz、RIAA特性誤差±1.2dB以内、歪率0.3%以内(1kHz、出力0.3V)、ゲイン110倍(41dB)、許容入力180mV以上、残集雑音0.4mV。【仕様】○サイズ:幅320×高さ80×奥行240㎜(突起物含まず)、重さ4.1㎏、消費電力約30W。○入力系統(250kΩ):PHONO1、CD1、TUNER1、TAPE1、○出力系統:プリアウト1(負荷50kΩ以上、REC1(負荷100kΩ以上)。シャーシ:タカチ電機、アルミ灰色塗装、フロントパネル白色塗装、表示は文字テープ。
内部配線にシールド線を使っていません。


2014年5月24日土曜日

私的プリアンプ論その3

【多機能プリアンプ】
1960~70年代の自作マニアが、自分専用のプリアンプを作ったら、きっと本器の様だったでしょう。当時のマニアは、市販品では満足できず、手間をかけ、試行錯誤を繰り返して音質を追求していました。トーンコントロール機能は、賛否両論ありますが、特に小型のスピーカーシステムの場合には、低域を補う上で必要不可欠でした。また、テープデッキへの対応も必須で、録音再生の機能は、レコードからカセットテープへの録音、FM放送のエアチェック等、当時の音楽ソースの中心でした。また、モノラル録音のソースへの対応として、ステレオ、モノラルのモード切替も良く使用しました。
8球式全段SRPP無帰還プリアンプ
【諸特性】○コントロールアンプ部:再生帯域20~30kHz±1dB、歪率0.1%(1kHz、出力0.5V)、ゲイン2.5倍(8dB)、最大出力8V、残留雑音0.09mV。トーンコントロール±15dB。○イコライザーアンプ部:再生帯域20~20kHz、RIAA特性誤差±1.5dB、歪率0.05%(1kHz、出力0.3V)、ゲイン160倍(44dB)、許容入力180mV、残集雑音1.5mV。【仕様】○サイズ:幅430×高さ180×奥行280㎜(突起物含まず)、重さ7.8㎏、消費電力約40W。○入力系統(100kΩ):フォノ1、CD1、TUNER1、TAPE1、○出力系統:プリアウト1(負荷5kΩ以上、入力トランス600Ω可)、REC1(負荷100kΩ以上)。シャーシ:アルミアルマイトフロントパネル、表示は文字テープ、無垢材ウッドケースウレタン塗装。
使用真空管、12AX7・・・1本、12AT7・・・2本、12AU7・・・4本。
ボリューム、トーンコントロール周りは、シールドのためアルミの板で囲ってあります。電源トランス、チョークコイル類はできるだけ離して設置すること、また、容量に余裕のあるトランスを使うことで、発熱やノイズの発生を抑えることができます。結果的にアンプ自体のサイズは大き目になりました。
入力、出力の信号系とAC100周りは極力離してある。ウッドケース下部にも穴が開いていて、下から上への空気の流れを作ってシャーシ内を冷却している。発熱の原因である真空管を空冷することは勿論、真空管以外の部品についても十分に空冷することによって、ノイズを抑え、長期間の安定した動作を図ることができる。
ノイズの少ないプリアンプが出来るかどうかどうかは、総合的な要因で決まりますが、部品のレイアウトと実装の技術、半田付けの良し悪しによって大いに左右される部分もあります。電源系ブロックと増幅系ブロックに分け、スペースを空けるようにし、グリッド入力は、他の配線と交差したり接近したりしないように配線の引き回をしています。本器は、信号経路にシールド線を使用していませんが、不用なノイズを拾うようなことはありません。蛇足ですが、出力トランスの取り付けが傾斜してしていること、またB電源、ヒーター電源、電源のアースが一束になって増幅部へいっていること等もご注目頂ければと思います。
8球式全段SRPP無帰還プリアンプ
プリアンプにおいても電源部は大変重要です。ヒーター電源には大容量のコンデンサーを投入し、B電源には、小電流にも関わらすチョークコイルを使用するなど、リップル除去には厳重に対処しています。

諸特性
左側イコライザーアンプ、右側コントロールアンプ部
本器は出力トランス付のため、トーンコントロールの低域、高域の上昇が15dB程度になっていますが、効果は十分です。。コントロールアンプ部において20Hz以下及び30kHz以上の帯域で程度に減衰していることが、音質上好ましい結果となりました。

2014年3月16日日曜日

私的プリアンプ論その2

【プリアンプの形態】
プリアンプの形態は、フロントパネル付の箱型シャーシが多いですが、パワーアンプのように真空管が露出しているのもまた味があります。遊び心は、真空管アンプの楽しみの一つ。真空管を魅せるために、シールドケースを省くと、トランスやオイルコンデンサーとの対比によって、真空管がより引き立ちます。

ECC83EQ-ECC82プリアンプ
【主な使用部品】○真空管:ECC82JJ社、ECC83SOVTEC社、6X4TEN社。○コンデンサー:出力部アメリカPYRAMID社、カップリングコンデンサー日通工社、トランスNOGUCHI、SEL社他。【諸特性】○フラットアンプ部:再生帯域20~20kHz±1.5dB以内、歪率0.5%以内(1kHz、出力0.5V)、ゲイン2.2倍(6.8dB)、最大出力8V以上、残留雑音0.1mV以下。○イコライザーアンプ部:再生帯域20~20kHz、RIAA特性誤差±1.5dB以内、歪率0.3%以内(1kHz、出力0.5V)、ゲイン92倍(39dB)、許容入力100mV以上、残集雑音0.6mV、【仕様】○サイズ:幅330×高さ135×奥行220㎜(突起物含まず)、重さ5.0㎏、消費電力約30W。

ゴールドの塗装がたいへん美しいアンプです。プリアンプでは、トランスと真空管を離すことがノイズ対策の基本。トランス類は定格に余裕のある方が、誘導ハム対策の上で有利です。


内部配線にシールド線は使っていません。内部配線を長いシールド線で引き回すと高域が減衰することがあります。音質の上でもシールド線を使わない方が有利です。


 【プリアンプの必要性
これまで多くのプリアンプ、パワーアンプを手がけてまいりましたが、レコードが音楽ソースの中心だった時代には、良いプリアンプ作った方がシステム全体としての音質向上が図れていたようです。レコード再生にはRIAA特性を持ったイコライザーアンプが必要不可欠ですが、特性に多少誤差があっても、実用上問題はなく、それほど気にせずに使用していました。また、レコードの録音状態に差があり、低域の豊かな録音だったり、高域が不足気味の録音もあったりで、それらを評価することも密かな楽しみでした。

私と友人E氏の会話(昭和50年頃)

E:SR(雑誌名)読んだか?プリアンプの製作記事が載ってたぞ。
私:SR買ったよ。ここにあるよ。(2人で雑誌に見入る。)
E:6球式のステレオプリアンプは、SRPPを使ってCRイコライザーにしている。他の雑誌にもSRPPのイコライザーアンプの記事が出ていたな。
私:この6球式のステレオプリアンプを参考にして作ろうと思っているとこだよ。
E:そうか。楽しみだな。でもな、CRイコライザーは、音は良いかもしれないけれど、ノイズを無くすことは絶対に無理だぞ。もし、CR型のイコライザーにCR型のトーンコントロールのプリアンプを考えているなら、悪いことは言わないからやめとけよ。
私:前にNFB型のイコライザーアンプを12AX7でやってみたけど、どうも気に入らない。ノイズも少ないし、特性もいいんだけど、何か物足りない。
E:マランツ型やマッキン型を参考にしたらどうなの。ほとんどノイズは出ないし、音もいいよ。
私:カソードフォロアーがついていることも、気になるんだ。

 このころ私は、マルチアンプシステムに凝っていて、チャンネルディバイダーやパワーアンプのドライブ段など、カソフォロを挿入していました。そして、性能を高めるはずの抵インピーダンス回路が音質の向上に繋がっていないことに気付き始めたようでした。

E:トーンコントロールはどうする気なの?
私:トーンコントロール回路は、今回は付けないつもり。もし付けたとしてもパスできるように、スイッチを入れておく。
E:名案だな。スピーカーが優秀ならトーンコントロールはほとんど使わないと思う。また、3ウエイのマルチアンプなら、低域、高域のコントロールはチャンネルディバイダーの操作でできるから必要ないよ。

滑稽な話でが、コスト面でマルチアンプシステムにするという事情がありました。マルチアンプシステムの方がコスト的に有利だったのです。ネットワーク方式の場合、大型の空芯コイルやオイルコンデンサーが音質を左右することになり、高価になります。また、高能率のコンプレッションドライバーやホーンツィータでは、ウーファとの能率を合わせるためには、これまた高価なアッテネータが必要になります。
マルチアンプシステムならば、低域よりもウーファよりミッドレンジやトゥイータの方が能率が低くても問題はなく、ユニットの選択肢が広いです。ちなみに音の良いミッドレンジは、10~20センチのフルレンジで、能率はウーファより劣りますが、コスト的にはコンプレッションドライバーよりも安価になります。
また、最大のメリットは製作後遊休のアンプ類を使うことができることで、低域にはプッシュプル、中高域にはシングルアンプを使うのが定石でした。、

今考えると笑い話にしかならない様な理由で、大真面目にマルチアンプシステムにしていました。音質上、最も影響の大きなミッドレンジには、アシダボックスやコーラルのフルレンジを使っていました。