2014年5月24日土曜日

私的プリアンプ論その3

【多機能プリアンプ】
1960~70年代の自作マニアが、自分専用のプリアンプを作ったら、きっと本器の様だったでしょう。当時のマニアは、市販品では満足できず、手間をかけ、試行錯誤を繰り返して音質を追求していました。トーンコントロール機能は、賛否両論ありますが、特に小型のスピーカーシステムの場合には、低域を補う上で必要不可欠でした。また、テープデッキへの対応も必須で、録音再生の機能は、レコードからカセットテープへの録音、FM放送のエアチェック等、当時の音楽ソースの中心でした。また、モノラル録音のソースへの対応として、ステレオ、モノラルのモード切替も良く使用しました。
8球式全段SRPP無帰還プリアンプ
【諸特性】○コントロールアンプ部:再生帯域20~30kHz±1dB、歪率0.1%(1kHz、出力0.5V)、ゲイン2.5倍(8dB)、最大出力8V、残留雑音0.09mV。トーンコントロール±15dB。○イコライザーアンプ部:再生帯域20~20kHz、RIAA特性誤差±1.5dB、歪率0.05%(1kHz、出力0.3V)、ゲイン160倍(44dB)、許容入力180mV、残集雑音1.5mV。【仕様】○サイズ:幅430×高さ180×奥行280㎜(突起物含まず)、重さ7.8㎏、消費電力約40W。○入力系統(100kΩ):フォノ1、CD1、TUNER1、TAPE1、○出力系統:プリアウト1(負荷5kΩ以上、入力トランス600Ω可)、REC1(負荷100kΩ以上)。シャーシ:アルミアルマイトフロントパネル、表示は文字テープ、無垢材ウッドケースウレタン塗装。
使用真空管、12AX7・・・1本、12AT7・・・2本、12AU7・・・4本。
ボリューム、トーンコントロール周りは、シールドのためアルミの板で囲ってあります。電源トランス、チョークコイル類はできるだけ離して設置すること、また、容量に余裕のあるトランスを使うことで、発熱やノイズの発生を抑えることができます。結果的にアンプ自体のサイズは大き目になりました。
入力、出力の信号系とAC100周りは極力離してある。ウッドケース下部にも穴が開いていて、下から上への空気の流れを作ってシャーシ内を冷却している。発熱の原因である真空管を空冷することは勿論、真空管以外の部品についても十分に空冷することによって、ノイズを抑え、長期間の安定した動作を図ることができる。
ノイズの少ないプリアンプが出来るかどうかどうかは、総合的な要因で決まりますが、部品のレイアウトと実装の技術、半田付けの良し悪しによって大いに左右される部分もあります。電源系ブロックと増幅系ブロックに分け、スペースを空けるようにし、グリッド入力は、他の配線と交差したり接近したりしないように配線の引き回をしています。本器は、信号経路にシールド線を使用していませんが、不用なノイズを拾うようなことはありません。蛇足ですが、出力トランスの取り付けが傾斜してしていること、またB電源、ヒーター電源、電源のアースが一束になって増幅部へいっていること等もご注目頂ければと思います。
8球式全段SRPP無帰還プリアンプ
プリアンプにおいても電源部は大変重要です。ヒーター電源には大容量のコンデンサーを投入し、B電源には、小電流にも関わらすチョークコイルを使用するなど、リップル除去には厳重に対処しています。

諸特性
左側イコライザーアンプ、右側コントロールアンプ部
本器は出力トランス付のため、トーンコントロールの低域、高域の上昇が15dB程度になっていますが、効果は十分です。。コントロールアンプ部において20Hz以下及び30kHz以上の帯域で程度に減衰していることが、音質上好ましい結果となりました。