2013年6月18日火曜日

アンプの特性と音質

アンプの特性を測定しても、音質の良し悪しは分かりませんが、基本的な性能のチェックはしています。測定器は、回路の実験には、なくてはならないものですので、オシロ、ミリバル、発振器、歪率計(2台)、周波数カウンター、矩形波発振器、デジタル電圧計など常備しています。
工房の測定器群、旧型ですが現役です


12G-B7プッシュプルステレオアンプ

この水平偏向出力管12G-B7プッシュプルは音質評価の標準機となっています。特徴は位相反転に抵抗分割型を採用したことで、PK分割型やカソード結合型に比べて、歪や再生帯域、出力などの点で不利になっているにもかかわらず、音質の良さは群を抜いています。製作者としてもあらためて良い音とは何かを考えさせられています。古い話ですが、電蓄時代からのマニアには、カソードから音が出るのはどうにも受け入れがたいという方もいたようです。(本器は常設の標準機)

水平偏向出力管12G-B7は、真空管テレビの全盛期に多用されましたが、今日では用途が限定されているためか、ダンパ管12G-K17等とともに安価に入手できます。そこで、日本の真空管技術の絶頂期のこれらのタマを生かしたアンプを製作しました。東芝真空管ハンドブックに、水平偏向出力管の音声出力管への応用についての一項があります。回路例は、標準5結、固定バイアス、高負帰還の大出力アンプが中心で、高性能化と高能率化を金科玉条に掲げた当時の世相を色濃く反映しています。しかし今日ではこのような使い方をすると、マニアに拒絶されることは間違いありません。現代の真空管オーディオにおいては、タマを大切に使うこと、負帰還技術に頼らないことは必須条件です。

表1 音声出力管と水平偏向出力管の最大定格の比較

12G-B7プッシュプル内部配線

テレビの垂直偏向出力管6BX7プッシュプルアンプです。双3極管を用いると配線が簡潔にまとまります。位相反転は古典的な抵抗分割型で、音質重視です。6BX7というとオーディオ界の大御所、故I先生の製作記事を思い出される方もいらっしゃることでしょう。出力トランスはカナダハモンド社製で、レンジは広くありません。≪特性≫出力4W+4W、残留ノイズ0.6mV、周波数特性20Hz~20kHz±4dB以内、サイズ:DWH200×300×130㎜、重さ5.3kg
6BX7単管プッシュプルアンプ
ハモンド社125E出力トランスは、プッシュプル用で、カタログではシングル可となっていますが、シングルで使用すると低域が出にくいようです。本器は低ノイズ、高音質で大変良くできたアンプです。



















2013年6月2日日曜日

6L6の思い出

6L6は歴史の長い球で、バリエーションも多いです。メタル管、G管、GTタイプ(細、太)など色々なタイプがあります。私、(airtone94)にとっても印象深いいものがあります。40年以上も前の記憶ですが、友人E氏とオーディオに夢中になっていたころが懐かしく思い出されます。

私:今度、6L6プッシュ作ろうかな
E:あれはな、電気食うから、トランス高いんだよな、でもメタル管はかっこいいよな
私:やっぱり6GA4のプッシュにしようかな
E:6L6は映画館のアンプに使っているから音がいいよ
(小山市の映画館でウエスタンの6L6アンプが使われていたらしい)
私:お金かかちゃうかな
E:お金もかかるが、第一6L6プッシュは20~30Wも出力があるからスピーカーを壊すぞ
私:6BQ5のプッシュでもいいかな
E:音は3極管がいいぞ、
(結局私は6GA4プッシュを製作、尚E氏も6GA4プッシュでした。当時、秋葉原では、6GA4ペア1500円でしたが、同じ東芝の6L6GCは3000以上しました)
私:東芝の6L6GCとGEの6L6GCは造りがそっくりだよ
E:確かに似ていけれど、日本製とアメリカ製が同じということはないと思うが・・・
(もしかすると、GEは日本から輸入していたのかもしれない。当時中古6L6Gは1000円位、6L6GCの中古品はあまり見かけませんでした。ちなみにWE3000Bは24000円くらい)

写真のアンプ(3結シングル)に使用しているのは、SYLVANIA社製で、42と同じST14タイプ、軍用のJAN6L6GA(JAN,Joint Army and Navy Standard米国陸海軍合同規格)です。出力2.2W+2.2W(歪6%)サイズ200×300×120㎜,5.6㎏


出力トランスはハモンドオルガンで有名なカナダハモンド社。6L6GAはサブシャーシに取付け、約8ミリ程落とし込むことで、通風孔として下から上への空気の流れを作り、真空管の放熱効果を高めるようにしました。


半田付けはアンプ作りで最も重要で、時間をかけて丁寧に行っています。線の引き回しは、グリッド回路は高圧電源部と出来るだけ離すこと。アース配線では、リップルを含んだ直流は電源トランスのセンタータップに近い位置に落とすこと。発熱するカソード抵抗はシャーシに密着させて熱を逃がすこと。これらのことは、安定性、耐久性を高める上で重要なことで、残留ノイズが少なくなり、バランスが取れ、結果的に良い音質が得られます。