2013年7月14日日曜日

欧米真空管の流通

真空管が電子産業の主役を譲り、70年代には半導体がオーディオ界を駆逐した当時、多くのオーディオマニアは性能を重視する傾向にあり、真空管には、もはや戻れないような風潮もありました。一部の真空管ファンは、「石のアンプは音が固い。」「歪っぽくて、音楽を聴く気がしない。」などと感じていましたが、ほんの少数派でした。真空管ファンの強い味方はラックス社で、数多くのキットを販売し、トランスを始めソケット、ロータリスイッチ等の部品も販売していて、いつかはラックスのキットを買おうと思っていました。また真空管ファンは、MJ誌、初歩のラジオ誌の真空管アンプの製作記事を読み、巻末の広告のページにある中古真空管やトランス、コンデンサーのジャンク物の販売リストをチェックするのが常でした。中でもサンセイエンタープライズ社(ジャン・平賀氏)は、欧州球の品揃えが豊富で、STC4300Bの大と小、旧ソ連EC33C等、販売していました。当時の自作マニアは、主に国産球か米軍球で製作しており、欧州球や300B、50、45等はなかなか入手できず、巻末の販売リストにある貴重な真空管の数々を見て、夢を振らませていました。特に欧州球については製作記事が少なく、球の規格が分からないので、その良さを知るマニアは少数でした。

主な欧州球メーカー
OSRAM GEC MARCONI MAZDA MULLARD  PHILIPSSIEMENS STC TELEFUNKEN  VISSEAUX 

STC社12E1シングルウルトラリニアアンプ
出力6.5W+6.5W(歪率5%)、残留ノイズ0.6mV、周波数特性20Hz~20kHz±1dB以内。サイズ(WHD)400×180×200㎜、重さ10.2㎏、消費電力90W。
STC社(Standard Telephones and Cables Ltd.)CV345(12E1)シングルウルトラリニア接続。12E1はイギリスの船舶用の球で、プレート損失35W、ヒーター電力6.3V、1.6Aの大型管です。造りが大変良くヨーロッパの香りのする美しい球で、見るからに良い音が出そうです。

出力トランスに音の良さで知られるタンゴUー808を使用、シャーシは艶消シルバーのアクリル塗装、トランス類も同じ艶消しシルバーに再塗装。

カップリングにはドイツERO社のフイルムコンデンサーを採用。結束バンドで束ねるのは、メンテナンスのし易さと配線同士が不要に絡まったりしないようにするためでです。
配線には太めのコードを使用しています。特に真空管のフィラメント配線は電流が多いので太いです。グリッド周りと電圧の高いB電源回りは極力離しています。はんだ付けはCR類を加熱して、半田を流し込むように行います。真空管のソケットやラグ端子は予備はんだ処理をして確実に付けます。仕上がりは、はんだの量、表面の艶を目視確認します。細かい部分は虫眼鏡で拡大して見るようにします。そして、ちょっとでも不安を感じたら、必ずやり直します。熱に弱いパーツは放熱用のクリップを付けて熱を逃がします。正しい半田付けは、良いアンプを作る上で最も重要なことと思います。こういった地道な作業を続けることで、結果的に音の良いアンプになることが多いです。